第25章 人は試練を乗り越え強くなる【真選組女中編⑤】
それからの私は決意したまではいいものの…先程から一向にその事を実現出来ずにいた
何故なら…
『す、隙がない…』
杏子ちゃんにはさり気なく繋ぐように言われたけど、隙が無さ過ぎて沖田隊長の手に触れることすら出来ない状況なのだ。
そうして結局手を繋ぐことが出来ないままお化け屋敷から出た私は急にそれまでの疲労感に襲われ思わず溜息が出てしまった
「…疲れたんなら休憩するかィ?」
『あ、いえ…さっきのオバケに少し吃驚しちゃっただけなので大丈夫です』
「お前、非現実的なものは信じねェとか言ってなかったかィ?」
『あははは…意外とリアルでしたよね!』
そう言って苦笑いを浮かべると沖田隊長はいつも通りの済ました顔で私から目を逸らし園内マップを開いた
『…はぁ』
やっぱり沖田隊長と手を繋ぐなんて無理があったかな…。
手を伸ばす度にかわされてるような気もするし…
ここまで来ると途中からもしやわざとやってるんじゃないかとも思ってしまう。
それにいちいち取り乱してる私と違って沖田隊長はいたって普通だし…
きっとこれは
彼が私と手を繋ぐことなんてこれっぽっちも考えていないという何よりの証拠だ。
本来遊園地はもっと楽しい気持ちで来る場所のはずなのに…何でこんなブルーな気持ちにならなきゃいけないんだろう。
どうせなら…こんな任務の為なんかじゃなくてもっと…
「オイ、」
『…』
普通のデートが…。
「オイ聞いてんのか」
『へっ!?あ、はい!!』
またしてもいきなり顔を覗き込んできた沖田隊長に驚いて変な声が出てしまった
『はぁ…』
だめだなぁ…考えないようにしようとすればするほど逆に意識し過ぎてしまう。
「オメー…無理してねェかィ?」
『え…』
しまった…!
もしかして私の態度が無意識に沖田隊長を傷つけてしまったんじゃ!!
『あのっ、違うんです!別に無理とかは全然してなくてですね!…何て言うかその…えっとつまり…』
「……強がってんじゃねーや」
『え…?』
「慣れない場所に長時間いりゃ、誰だって疲れんのは当たり前だろ」
『…は?』
慣れない…?
『あ!実はそうなんですよ、こういう所本当に初めてで!なんて言うか並び疲れして足痛くなっちゃったみたいな〜』
何か色々ズレてたけど、どうやら沖田隊長の事を傷つけたわけではなかったみたいだ。
