第25章 人は試練を乗り越え強くなる【真選組女中編⑤】
何かがおかしい気がする…。
突然固まる私に沖田隊長は首を傾げた
「…どうしたんでィ」
『すみません、私達って今日ここへは任務の為に来たんですよね?』
「あぁ、ホシの追跡な」
『あの…どうしてお化け屋敷の列に並ぼうとしてるんでしょうか』
「ホシの野郎を見つける為だろィ」
しれっと答える彼に私は眉間に皺を寄せた
『ですから、早く捕まえないとそのホシが逃げてしまうかもしれないっていうのに何でお化け屋敷に並んでるのかって聞いてるんですよ』
「何言ってやがんでィ、ヤツの居場所を絞っていくにはこの方が手っ取り早いだろ」
『え?…もしかしてこの列のどこかにいるんですか?』
言いながら辺りをキョロキョロ見回しホシを探す私に沖田隊長は呆れたように溜息をついた
「オメー…土方さんの話ちゃんと聞いてたかィ?」
『え?』
沖田隊長の言葉に目を丸くして固まっていると続けて彼は言った
「こっちが知り得てる情報は今日この大江戸遊園地にホシの野郎が現れるっつーことだけ。そんで今回俺達に任された任務はヤツを見つけてその動きを報告することでィ」
『…』
「つまり逆に言えば俺達がヤツを見つけねェ限り、この任務は終わらねェってこった」
『え…ちょ、ちょっと待ってください。じゃあこの遊園地にいる大勢の人の中からどこにいるかもわからないそのホシを私達だけで見つけろってことですか?!』
私の言葉に沖田隊長は再度溜息をついた
「今更把握してんじゃねーや。でなきゃ何の為にテメェとこんなフリしてんのかわからねェだろィ」
『あ…そ、そうですよね』
確かに…こんな大勢の人の中を刀を持って捜し回るわけにはいかないし…最初からホシの居場所がわかっているなら副長もわざわざ私達にこんな任務を命じたりなんかしないか…。
『ということはホシを捕まえるんじゃなくて見つけて動きを報告するだけでいいってことですね!』
「簡単に言えばな…」
そっか!それなら時間は十分にあるもんね!
要するに今日1日そのホシを見つけるまで私は沖田隊長と2人きりでいなくちゃいけないってことだよね…なるほど、うん理解理解!
未だ不審な目で私を見てくる沖田隊長に軽く微笑み、そっと背中を向ける
そして次の瞬間、私は無線に向かって限りなく声を小さくして叫んだ
『助けてくださいイイッ!』
[いや早過ぎません!?]
