第17章 新しい事を始める前に古いものは片付けろ
『1度は組織から抜けた身…また隊に戻して欲しいなんて身勝手なことは言いません。…』
色々回り道してしまった
『だけどやっぱり私は真選組隊士でありたい…』
でもその分わかったこともある。
私は副長に頭を下げ、刀を差し出した
1度目は大切な人の死から握ることを恐れ、遠ざけていた
2度目は家族の元へ帰る為に自ら剣を置いた
だから3度目は護りたいものを守るためにこの剣を握りたい。
『私…大石結衣は、財閥の娘としてではなくただの1人の大石結衣として再びこの真選組への入隊を希望します』
そう言って局長、副長の目を真っ直ぐに見つめると、副長は無言で私の手から刀を奪った
『ふ、副長っ』
「今のオメーにはこの刀はもう使えねェよ。こんな欠けちまった刃じゃ何も斬れやしねェ…」
『…』
「もっとテメェらしい刀を選んで来い、今のお前に相応しい刀を」
そう言って私から目を逸らし煙草を噴かす土方さんを見つめる
『副長…』
「結衣ちゃん、お前が家族の元へ戻り何を決意したのかはわかる。だが俺達真選組は身分なんぞ関係ない、ただ志すもの…魂さえ1つ同じならそれだけで仲間に違ェねーのさ」
『局長…』
「例えお前が何度立ち止まっても、何度遠くへ離れて行っても俺達もまた、何度だってお前を迎え入れる。…お前は仲間であり、俺たちの家族なんだからな」
そう言って頭に乗せられた大きな手に私の視界はついにじわぁっと歪み始めた
「最近よく泣くねィ、おめーは」
そう微笑む沖田隊長の言葉に私の涙は止まることを知らない
『…殆ど…嬉し泣きです』
そうか…私だけじゃなかったんだ。
大切なのはみんな同じなんだ。
私はいつの間にかこんなにも多くの人達に支えられていたんだな。