第13章 旅のお供には信頼出来る奴を置け【帰省編①】
『沖田隊長…私…向こうでもみんなのこと絶対忘れません…。隊長が教えてくれたことも…絶対忘れない!』
私はそっと立ち上がり沖田隊長に背中を向けた
『もう私は真選組にはいられないけど…もしまた会えることがあったらその時は…』
『また…餡蜜…食べに連れて行ってくださいね』
そう言って振り返った次の瞬間
『!?』
ぐいっと沖田隊長に腕を引っ張られ、そのまま彼のいる布団の上に倒れ込んだ
目を開けると沖田隊長に組み敷かれる形で布団に仰向けになっていて彼は無表情で私を見下ろしていた
『お…沖田隊長ッ』
「…んな顔して言われても…困らァ」
『えっ…』
見開いた私の目から溢れる"それ"に私は自分でも驚いた
『お…起きてたなんて人が悪いですよッ』
「今起きたんでィ、てめェのブヒブヒ喚く声が煩ェから」
『そ、そんな豚みたいな声出してません!!』
怒りと羞恥で顔を覆い隠す私を沖田隊長はいつもの調子でからかう
『ちょ、いい加減どいて下さいよ!』
「いいぜィ、ただし…
さっきの…もう一度ちゃんと俺の目を見て言え」
『えっ…?』
解放され、起き上がる私を沖田隊長は真剣な目で見つめた
『…だから…私はその、帰ろうと…』
「それは自分の意志でか…」
『はい…』
「…嘘つくんじゃねェ」
『嘘じゃないです!本当に私は…そう、決めたんです』
俯く私に沖田隊長は静かに口を開いた
「…じゃあ…何でさっき泣いてたんでィ」
『!』
「人の心を読むのは得意じゃねェが…お前の考えてることくらい何でもお見通しでィ」
『…』
「いや、何でも…じゃねェな。わからねーこともあらァ」
沖田隊長はそう言って目線を畳に移す
「お前が帰るってのは何の為でィ…家か、親父か、それとも…」
『…母上が…』
「!」
私は沖田隊長の言葉を遮り、震え混じりの声で言った
『母上が…もう長くないんです』
「…」
『本当は…本当は財閥なんて父上なんてどうでも良かったんです!私はただ…母上が苦しんでいるのに傍にいられないのが辛くて…わかってるんです!母上のことになれば私が帰ってくるって…全部父上の思う壷だって…でも、会いたいんですッ!私は…』
言いかけた瞬間、沖田隊長によって抱き締められた
『!?』