【ヒロアカ】暴走する、疾風と雷のジャンクフード【上鳴電気】
第5章 "Plus Ultra"
「筆記、実技共に兎に角目覚ましい! おめでとう、君はこれで晴れて雄英高校の生徒だ!」
「……!!」
タダでさえ昂っていた鼓動がさらに早くなる。
画面には“50ポイント“という表記が映し出されている。どうやら数々の敵を一気に倒したのでそれのボーナス分が上乗せされていたらしい。堂々たる合格だった。
急いで階段を駆け下りては、リビングに居るお父さんに合格を知らせにいった。お父さんは若干涙ぐんでいる。
「颯…合格できたんだな!……よかったじゃないか」
「そうッスよパピー、俺やりきったんスよ!」
…きっと今、お父さんはきっと微妙な心境に置かれているのだろう。息子の成功に喜んでくれてはいるが、少し悲しげというか哀愁漂う顔をしているから分かる。…ヒーローになるということは、いつでも命の危険と隣り合わせであるということだ。そんな所に息子を置いて大丈夫なのか、命を落としてしまいやしないか。
ヒーローの「自己犠牲の精神」というのは周りの人の自分を思う気持ちを踏み台にして成り立っているものだ。他人の命を救うための、命懸けの仕事。
だが、自分は努力に努力を積み重ねてここまでやって来たのだ。一見ちゃらんぽらんに見えるかもしれないが、これだけは絶対に譲れない矜持がある。
「…お父さん!」
「… …どうした?」
「俺、精一杯頑張るッスから。ヒーロー目指して一直線に…寄り道するコトなく進んでいくッスから。」
「…流石は俺の息子だ!」
お父さんは俺の頭をわしゃわしゃと何回も強く撫でてくれた。思わず涙が出そうになるのを必死にこらえて、二階に上がって鞄を整理し始める。
… …大丈夫、俺には名実共に信頼できる相棒がいる。
そう言って俺はまた布団に入り幸せに眠る。残り限られた家族との時間をじっくりと味わうなんてことは考えない。…きっとそうしたら、また名残惜しくなってしまうだろうから。