第8章 No.8
私は新開の少し後ろを歩き、
うちへと向かった。
大きな背中だなあ、なんて考えながら、
歩いていた。
新開「気になったこと、聞いてもいいかい?」
「あ、うん、もちろん。」
新開「少し、ストレートな質問かもしれないが…恋愛経験がないっていうのは本当なのか?」
「うん…尽八に聞いた?」
新開「ああ、すまない。尽八が教えてくれたんだ。」
いらんことを何故言うんだあのナルシストカチューシャは…。
ワッハッハー!
と言ってる彼の姿が思い浮かぶ。
新開「けど、実は俺もそんなに多くはないんだ。」
「え?そうなの?」
新開「自転車にずっと夢中だったから、あまりちゃんとした恋愛はしたことがないかもしれない。」
へー、意外な回答。
女の子をとっかえひっかえしているのかと。
「けど、新開は女の子に超モテモテだからいつでも彼女とかできちゃうじゃん。」
新開「そうだな、作ろうと思えばいつでもできる。」
サラッとすごいこと言ってるこの人…。
新開「だけど、俺は、『この人』って決めた人じゃないと、ダメなんだ。」
「その…『この人』はみつかったの?」
新開「ああ、見つかった。」
「よ、よかったね…。」
新開は立ち止まり、
私の方を振り向いた。
新開「本当に、よかった。」
時が止まったかと思った。
夜道に二人きりで、
車が一台もとってなくて、
本当に静かで。
ずっとこの瞬間が止まっててほしいって、
心の中から願ったぐらい。
今でも私は新開とこんな風に喋ってられるのが
信じられなくて、
今でも新開とデートに行ったことが信じられなくて、
今でも、毎日ドキドキしている。
慣れることなんてきっとないんだろうな。
いつでも、この人は私をドキドキさせるんだ。
胸の奥がぎゅっと捕まれる感じ。
今日も、今も、この瞬間をさせられてる。
胸が痛くなるくらい。