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鬼は愛に全てを捧げる

第2章 出逢い




「いやぁぁっっ!気持ち悪いっ!!!」


思いっきり裕次郎の顔を殴って、怯んだ隙に裕次郎の下から抜け出す。

「いた……っ、鬼宮さん…?今、なんて……っ?」


震えながらこちらに近づく裕次郎。

「来ないでっ!!汚らわしい…っ!」


近くにあった花瓶を裕次郎の足元に投げつける。


ガシャンッと硝子の割れる音がして、中に入っていた水がゆっくりと床に広がっていく。

「あ……あ……、あぁ…っ…」


裕次郎は顔を青くして震えている。


「どうした!!これは……!」


騒ぎを聞き付けた父が、慌てて部屋の中に入ってくる。そして、中の様子を見て目を丸くする。


「お、お義父さま…!鬼宮さんが…!僕を…っ、僕をぉぉぉっ!!!」



裕次郎が父に泣きつく。


「鬼宮っ!!お前は…っ、何をしているんだ!!!」


話を聞いた父がカンカンになって私を怒鳴りつける。

私もそれでカッとなる。


「何故裕次郎さんを受け入れない!!優しくて良い方だ!!お前も幸せだろう!!」


「嫌よ!!どうしてこんな方と結婚しなきゃならないんですか!?孫ですって?冗談じゃない!こんな方と交わるくらいなら、死んだ方がマシよ!!」


「なんてことを言うんだ!!謝りなさい!!」


「謝りません!!先程だって私を無理やり抱こうとして…、鳥肌が立ちましたわ!気持ち悪くて涙が出てきましたもの!!」


「ひどい…っ、そんな風に思っていただなんて…っ!」


裕次郎は私の言葉に声を上げて泣き出してしまった。


「男がわんわん泣かないでください!見苦しい…っ。私はこんな方と結婚する気など欠片もございません!!」


「そうか…っ、なら出ていけ…っ! 」


父は今まで見たことないほど怒り狂い、出て行けと扉を指した。


「言われなくてもこちらから出ていきます!こんな家……っ、二度とかえって来ないわ!!」


はだけた着物を直しもせず、家を、そして結界を飛び出す。

全速力で林を駆け抜けると、ドンッと何かにぶつかった。



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