第2章 出逢い
「鬼宮様、お父上様がお呼びでございます。」
侍女から父の呼び出しを聞き、何事かと思い父の部屋へ向かう。
「失礼します。」
障子の戸をスっと開け、父の前に正座する。
「私に話があるようですが、なんでしょうか。」
父はうむ、と頷くと話し出した。
「お前ももう16。そろそろ婚姻しなければならない時期だ。」
あぁ、とうとうこの時期が来てしまった。
私は恋を知らない。愛を知らない。結婚だなんてしたくない…。
……でも。そんなわがまま、言えない。儀式を挙げるまでに、マシな相手を見つけなければ…。
「3日後、また呼ぶ。それまでに覚悟をするといい。」
「……はい。」
失礼しました、と父の部屋を後にする。
憂鬱だ。結婚などしたくない。何故16を超えたら結ばれなくてはならぬのか。
自室に篭もり、窓から月をみあげる。
今宵は美しい満月だ…。
沈む気持ちを抑えながら寝床に入り、瞳を閉じる。
疲れのせいか、普段より円滑に眠りにつくことが出来た。
そして、次に目が覚めたのは、翌日の昼。
未だに沈んでいる心を知らぬフリして、湯浴みを済ませ、身嗜みを整える。
食事を済ませたあとは、一日に何十通も届く恋文への返事を書いたり、琴を奏でたりして暇を潰した。