第2章 プリマドンナの憂鬱
「それでもあの子は私を愛さなかった。」
美しい顔が憎いと死んでいった唯一の友達。
「貴方が私にとってのプリマドンナだったの。」
忘れられない。
彼女の死に顔が、恨みの籠った瞳が。
私の頭の中で繰り返し綺麗に舞い散っていく。
「貴方の方が美しかったのよ。」
あの瞬間を美しいと思ってしまった。
「私にも残酷で醜いところがあるの。」
貴方の憎悪を美しいと
貴方の死に方がまるで悲しい物語みたいで。
「本当に貴方が………美しいと思ったの。」
貴方は私にとってのプリマドンナだった。
「また………遊んでね。」
美しさなんて関係なかった子供の頃のように。
私も貴方も
プリマドンナでは無かった頃のように。
「美しさなんて…。
貴方も私も要らなかったのよ。」
誰よりも愛された
誰よりも美しかった
世界一のプリマドンナ。
彼女の最後の言葉は
残酷でどうしようもなく美しかった。