第2章 プリマドンナの憂鬱
プリマドンナの憂鬱
「私にも残酷な所もあるのよ?」
鏡に映るのはなんとも美しい顔。
「私の爪先は纏足みたいに
グチャグチャなのよ?」
それでも美しいと言われる。
それでも美しいと皆疑わない。
「ライバルだったあの子は
私が美しいと言って死んでいったわ。」
美しいことなんてなんの得になるのか。
産まれてからずっと美しいから
美しくない人の気持ちなんて分からない。
「青ざめても美しいのね。」
首元を切って血しぶきが上がり顔が青ざめる。
白い顔にかかる赤が何とも美しい。
「目を抉っても、芸術品みたいね。」
ペーパーナイフで目を抉っても
苦痛に顔を歪めても残酷な絵画のようだ。
「最後までこの顔は美しいのね。」
どれだけ見つめてもその事実は変わらない。
「やっぱり、私はプリマドンナよ。」
鏡の中すら舞台のような美しさ。
このグロテスクな終焉ですら、
ドラマチックに見えてしまう。