第1章 目覚め
「どういうことかな?
事故後は気絶してたようだけど、事故前のことは覚えているだろ?」
「医者が言うには、ショックによる記憶喪失らしいです」
岡田刑事は若い刑事の耳元で何かを話し病室から出した。
たぶん確認に行ったのだろう。
「君は記憶がなくなったのにずいぶんと冷静だね
記憶喪失者はもっと取り乱すと思っていたよ」
明らかに疑ってるのが分かった。
「自分でも不思議ですよ
気付いた時はパニックになりそうだったけど、麻酔の影響なのか?寝たら冷静になれた
代わりにさっきまでここに居た和田が取り乱してましたよ」
正直、こんなに冷静な自分が不思議だ。
「名前は覚えていたのかね?
家族の事は?」
「和田が教えてくれました
もちろん和田のこともまだ思い出せてないですが…
家族はまだ会ってないのでなんとも…
今のところ名前も顔も思い出せないですね」
岡田刑事は頭を掻きながら…。
「…困ったねぇ
ちょっと失礼するよ」
と呟きながら部屋を出て行った。
しばらくすると、岡田刑事と中年の男女が入ってきた。
「和也、私のこと分かる?」
女性が今にも泣きそうな顔で聞いてきた。
「ごめんなさい
何も思い出せないんです」
多分この二人が両親なんだろう。
それは直感で感じ取れたが、名前すら思い出せなかった。