第3章 回復
「会社の同僚がバイクを盗まれたんだよ
港で盗まれたバイクがよく転がってるってネットで知って、気になって探しに行った…」
思い出したのはそこまでだった。
「確かにそんな噂はある
だいたいがパーツを取られて放置されてるらしいがな」
和田も港の噂は知っていた。
「…それ以上、思い出せない」
前の様に記憶が戻るときの頭痛がなくなったのは助かる。
「無理するなって…
今みたいに何がきっかけで思い出すか分からねぇんだからよ」
和田が気遣ってくれる。
「なぁ、幸司だったらヤバい現場を見たらどうする?」
「まぁ状況にもよるけど、隠れながら何してるか見極めるだろうな」
和田の答えは予想していた通りだった。
和田なりだが正義感が強い男だから。
「たぶん和也も同じ事をしたんじゃないか?
それが奴らにばれて…」
「…俺もそんな気がする
けど、なんで平田も倒れてたんだ?」
そこがどうしても不可解な事件だ。
「…仲間割れか?
でも、大した怪我をしてなかったんなら、和也がやっつけたんじゃね?」
和田は冗談混じりに答える。
「俺はそんなに強くないんだろ?」
「そりゃあ、俺が強すぎるからだよ」
和田は軽口を叩き、「またな」と帰っていった。