第7章 鉛の空にきのこ雲
「毎日があっという間だなぁ。」
歳をとると日々が早く感じる。
その現象の正体は反復動作によって
脳が思考せずとも決められた指示を出すことが
多くなっていくからだ。
初めは物を咀嚼するのにも脳が思考していた
それが無くなり当たり前になることにより
考える時間が歳と共に減っていき
反復動作のみをこなすことになる。
そうすると思考回数が減少し
時の流れが早く感じるのだ。
『このまま、あっという間にジジイになるのか。』
それを止めるには、この怠惰で幸せな日常に
少しばかりの新しい刺激が必要だ。
知らないことを知ることで
思考はクルクルと回り時の流れを
ゆっくりと充実した物へと変えられる。
「まあ、そんなもんか。」
『まあ、そんなものだろうな。』
鉛の空にきのこ雲。
あの地獄の様な世界で2人は必死に愛を紡いだ。
無念だと輝く硝子の地面に流せぬ涙を移して
底なしの愛を胸に見送ったお互いを想った。
神はそれを不憫に思い2人をまた巡り合わせたが
そんな事は知りもせず幸せを当たり前に思い
怠惰にぬるま湯につかり生きていく。