第7章 鉛の空にきのこ雲
晴天の空と綺麗な朝日。
死の恐怖を感じることの無い幸せな毎日。
「いってらっしゃいっ!!」
『あぁ、今日は早く帰れるからな。』
時代が変わり何も知らない男女が2人。
あの時の無念など心の何処にも残っていない。
奇跡は起こり2人は再び出会ったが
それを奇跡と知りもせず
何も無い日常を怠惰に過ごす。
「(きっと同じ毎日が過ぎ去るだけ。)」
『(きっと同じ毎日が過ぎるだけだ。)』
それの幸福を知らぬことは幸せなのだろうか。
当たり前の幸せを願っていた時と
愛の重さは同じなのだろうか。
同じ2人だとしてもどちらが幸せなのか。
明確に今の方が幸せであるはずなのに
愛の重さと日々の感謝はそれに比例しない。
人間は思考する生き物だが
同時に忘れる生き物でもある。