第6章 背中合わせの君達へ
「毎日…たのしいの。」
『俺も毎日……楽しい。』
泣き顔なんて女の武器のようでみっともない。
貴方にはそんな所はみせたくないの。
弱味など、無様な姿など情けない。
お前にだけはそんな姿を見せてやらない。
その見栄になんの意味があるのか。
背中合わせの彼等は
お互いの顔を見る事を忘れている。
こんなに分かりやすく
苦痛に歪んでいるのに、口先だけで美談を語る。
「(貴方は私の世界なの。)」
『(お前は俺の世界なんだ。)』
お互いに自分の世界なのだと思うほど
大切に思っているのに知ろうとはしない。
「『(絶対に守り抜く。)』」
何と滑稽な事か。
背中合わせの君達は 何も知らない。
背中など守っても意味が無いことを。
罵倒 暴力 理不尽 権力。
数え切れないほどの刃の中で生きるには
向き合ってこそ耐え抜くことができるのだ。
「(……どうすれば貴方が幸せになるの?)」
『(どうやれば、お前が笑っていられる。)』
そんな当たり前の事を忘れた2人は
それに気がつくまでお互いなど守れない。
自分を守れぬ者に
人に弱さを見せれぬ見栄張りに
大切な人を守ることなど出来はしない。