第5章 君を見つけた
『………どこ、連れてくかな。』
彼女は純朴そうな顔にピンク色の化粧を施して
上品なワンピースに奇抜な色の
やけにかかとの高いヒールを履いていた。
一見チグハグな格好なのにやけにまとまっていて
恐らくとてもセンスがいいことが伺える。
本名は ひ から始まって
どうやら男を転がすのが上手くて
自分の武器がよく分かっている癖に
とても似合わないタバコを吸っている。
そして初めて運命を感じた愛しい人。
『………なんか、生きててよかったな。』
つまらなかった日常が突然鮮やかに色づいて
何だかとても身体が軽い。
どうやればまた、あの小さな桃色の口が
きゅっ。と弧を描いてくれるのだろうか。
自分の生きる意味がまるでそれだと
そんな錯覚まで浮かれた頭は考え出す。
『…ほんと、良いもの見つけたわ。』
運命を他人は信じるのだろうか。
俺は今日、はじめてそれを感じた。
”君を見つけた”
それが幸福なのかは分からないが
どうやら見つけることは運命だった様だ。
こんなにも胸が高鳴るのだから。