第12章 リンドウ(夏油傑)
彼女は先天的な能力はまるでなかったが、この手で殺そうとは思わなかった。
自分の中の信念との矛盾もあるが、そこはいずれ解決するだろう。
なんの変哲もない、ただの少女だ。
年はせいぜいいって高校生程だろう。
普通の一般的な同じ年齢くらいの同性よりは遥かに小柄だった。
ろくな物を与えられなかったのを想像できる。
月に照らされた肌は真珠のようにまっさらで白く、細い髪は金糸のように艶があり、神霊のような物になった大百足が気に入るのも少しわかる。
かくもこういう物騒な邪神は美しい者に惹かれる傾向があるようだ。
ただの少女になったその顔は、安堵の笑みを浮かべる。
それは更にその美しさを引き立てた。
詰まるような吐息でしかるるの反応を把握できないのは少しもどかしい。
しかし慣れてくれば、段々とその方が行為としての情緒があり、その静寂が心地良い。
初めて彼女にそういう感情を抱いた経緯は覚えていない。
成り行きと言えば聞こえが悪いが、それは彼女すら拒んでいなかった。
ただ震える身体を抱き締め、共に現世にいるということを確認したまでだった。
弱々しく細い指が自分の身体を這い、寂しさを埋めて欲しいと懇願しているように思えた。
言葉少ないるるがこういうことを伝える術は確かにない。
汲み取るように聞くと、静かに頷く。
そんな、すぐに切れそうな程に細い糸でしか、我々の繋がりはない。
薄暗い部屋にわずかに焚かれた行燈の灯がわずかに揺れる。
その光から浮かび上がる肌も月明かりとはまた違う美麗さを醸し出す。
柔らかな花の香りが身体の芯をくすぐった。
細い身体に自身を挿入するのにはまだ罪悪感が少しある。