第12章 リンドウ(夏油傑)
蠱毒という古代からの呪術がある。
壷に百足や蛇、蛙などの虫を飼育し、共食いをさせ、最後に残った1匹を祀る。
この1匹の毒を飲食物に混ぜて使用する。
るるは正にその呪いの餌食となった哀れな乙女だった。
集落の大きな屋敷で、たった1人残された彼女に出会った。
1人しかいないと聞いたが、巨大な百足が彼女を四方から守るようにしっかりと構えている。
「君にそれは見えているのか?」
そう聞くと首を横に振る。
可哀想に、ショックで声を失っているようだ。
おおよその想像は簡単だ。
集落の長か何かの、妾の子だろう。
毒殺される予定だったが、その呪いがいたく彼女を気に入り、住み着いている。
そして、彼女に危害を加えようとするものを全て払いのけ、山奥の集落を一つ消してしまった──ようだ。
大百足は人々の信仰心を集めたのか、そこそこの力を持っている。
ありがたく取り込んでいくとしよう。