第10章 ヤナギ2(??前提ジャック)
消毒液がしみるのか、いつもなんともなさそうなジャックくんが少し痛そうに眉を寄せる。
授業で使った課題も持ってきてくれたようで、机に並べられていた。
改めて面倒をかけてしまったと思い、救急箱から絆創膏を取り出して、下手ながらにぺたぺたと貼っていく。
不格好だけど一通り終わってから、ジャックくんのペンについた宝石を見る。
少しだけど、濁りが出ているように感じた。
「これは…自分でなんとかする…」
と見ていたペンを隠された。
「なんで隠すの!」
「なんでもねえってこんくらい」
「でも、先生にここに来てって言われたんでしょう?
じゃあ──」
「お前だって、こんなこと、したくないだろう!」
いきなり大声を出され、思わずびくっと身体が跳ねた。
「あ、その……怒りたかった訳じゃねえんだ」
「……優しいね」
本心からの誰かからの気遣いに触れたのはいつ以来だっただろうか。
みんな、私を壊れ物みたいに扱って。
もしくは物のように──。
ジャックくんは何もせずに帰ろうとドアを開けたところで、レオナさんと学園長がそこにいた。
私には聞こえなかったけど3人で話し合って何かを耳打ちされたようで、すぐに踵を返し部屋に戻ってきた。
「……その」
「ね、言ったでしょ?」
「クソ…!」
ジャックくんは心底悔しそうに舌打ちをすると、頭の耳が少し下りた。
「ご、ごめんね、私じゃ嫌だよね……」
「違っ……!!!」
否定の言葉を言い掛けてから、更に恥ずかしそうに俯く。
「女の方が、ツラいだろ、こういうのって…」
気遣ってくれていたようだ。
申し訳ないのと同時に、凄く心が温まる。
「私はもう大丈夫、ジャックくんが嫌じゃなければ、いいよ」
ベッドに腰掛け、隣に来るように促す。
「……気が変わるなら、早めに言ってくれ」