第1章 ロベリア(ダンデ)
「元!チャンピオン!ターイム!!」
懐かしい台詞と声にぎゅっと胸が締め付けられる。
「ありがたい俺様からの指導を受けたいとチャンピオン直々から相談が来た!!
秘密の作戦会議をしたまでだ。
おっと、秘密だからな、ここまでしか話せないぞ!?」
「な、なるほど!」
「お二人とも勉強熱心ですね!」
「では!我々は解散する!」
ダンデさんが立ち去ると拍手が聞こえてきた。
満足したマスコミ関係者もメモを取ったりボイスレコーダーを確認して、私になんてもう興味すらないようだった。
気づかれないうちに帰ろうと、温かい上着を握り締めてそそくさと路地からホテルに向かう。
圧倒的なカリスマ性、人々を一瞬で魅了する技術。
悔しいけど、遠くて及ばない。
涙がぽろぽろと溢れて、鼻をすすりながら早足になった。
何か飲み物でも買って帰ろうと休憩所に寄ると、ダンデさんがいた。
「…やっちまったな、折角カッコよく決めたのに…スマホ、コートだったな……」
「あの」
「っ!」
「これ……」
「るる!救世主だな!」
二カっと太陽のように笑う顔は、幼なじみそっくりだった。
「すみません、とても助かりました……」
「ああ」
「私、まだまだですね、あんなことで取り乱しちゃって」
「そんなもんだ」
「ダンデさんにも、こういう時期ありました?」
彼は遠くを見てから、小さく、
「ありまくった」
とだけ答えてくれた。
安心した、というか、なんだかそれが嬉しくも思えて、何かがもう抑えられなくて、ベンチから慌てて立ち上がった。
「……よかった」
「でもな、失敗した数だけ、次はこう返そう、次はもっとこうしようって、作戦も戦略も考えた!!」
「…っ!」
「バトルと同じだな!!」
嬉しかったのに急にそれが痛くなった。
踞りそうになるのを堪えて、うん、と頷いた。