第1章 ロベリア(ダンデ)
「私、もっとカッコよくなりますから…!
そうしたら…そうしたら………」
つい言いたくなってしまって、考えるより先に言葉が出てしまう。
そして、行き詰まった。
どうしよう、と思考を巡らせていると、ダンデさんは急に私の手をひいて、そして、私の唇を呆気なく奪った。
ほんのり香るコーヒーと、懐かしいにおい。
なのに深みのましたコロンも少しだけ感じて、ああ、大人なんだなって、蕩けるような頭で少しだけ思った。
どのくらい時間がたったかわからないけれど、きっと、一瞬だったのかもしれない。
それでも、自分には長すぎるように思えた。
「俺は悪い大人だからな」
とニヤリと笑った。
「お前が一人前になる前に全部ぶんどってやる」
それは今まで感じてた憧れとも甘い感情ともまた少し違う、ちょっと怖い、とすら思わせる返事だった。