第5章 クロユリ2(五条悟)
幼かったあの日からずっと隠していたその感情を、胸の中からずるりと引きずり出される。
悲しいとか、嬉しいとか、私が誰かに言う度に他の誰かが傷ついてつらい思いをしていた。
だから、私は徐々に全ての気持ちを少しずつ殺していたのかもしれない。
だから、ずっと思い出せなかったのかもしれない。
今、全部をえぐるように掘り起こされて、私はどんな顔をしてしまっているだろうか。
「あ、あの…お願いします…」
果たしてこの返事で合っているのだろうか。
わからないまま、絞り出すようにそう答えた。
先生は目隠しを外すと、楽しそうに、いいよ、とだけ優しくいう。
指を絡めるくらいはなんともないのに、唇を触れられそうになると、その指輪は小さく光を放った。
先生はさもどうってことなさそうにそれを無視して、私の唇に舌を這わせ、開くように促してくる。
どうしたらいいかわからず、従うように少しだけ閉じた唇の力を抜くと、ぬるりと柔らかな他人のものが口内へと侵入した。
初めての感覚にぞわりと背筋に冷たいものが走る。
私にまとわりつく青い閃光が少し強まる。
「んっ…」
「集中して」
そっと命じられ、目をぎゅっと瞑った。
少しでも光に気が持っていかれないように。
ふと、目に何かが触れる。
「これしとこっか」
安心させるように声をかけられ、そのまま目隠し用に布がかぶさったことがわかる。
さっきまで先生の肌に触れていたものだと思うと、なぜか恥ずかしい。
制服を丁寧に脱がされ、床に重なっていく音が聞こえる。
背中に冷たいシーツの感触が直に伝わり、ぴくっと肩が揺れた。
目隠しをされてから、確かに前より光が感じなくなったお陰で、肌に触れる他人の手の動きがよくわかる。
くすぐるかのようにやわく触られたかと思うと、撫でるように緩やかにすべる。
「や…っ」
感じたことのないようなお腹の奥がじわりと熱くなる感覚がし、自然に声が上がる。
恥ずかしさで自分の手で顔を覆った。
動きのわからない手が胸にさしかかると、あまりの刺激に近くにある枕をなんとか手繰り寄せる。
「あぁ…!!」