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【短編集】倉庫【雑多】

第5章 クロユリ2(五条悟)


寮に戻ると、先生は離れの個室に案内してくれた。
自室じゃないことに疑問しつつ、和室ではなくどこかシックな雰囲気の洋室なことに少しだけ驚いた。
「雰囲気もへったくれもなくてごめんね」
なんのことかわからずに首を傾げる。
「指輪にかけられた呪いは『固執や執着』といわれるもの。
なんとなくわかるね?」
「はい…」
誰にかけられたかすらわからない執着…いまいちピンとこないけど、静かにその話を聞く。
「君に対するそれをその指輪に諦めて貰わないといけない、つまり、僕の物だってことを見せつけよう」
「……なんでそうなるんですか…?」
先生は笑いながら私に近づく。
怖くて一歩後退った。
「だって君に何かやましいことしようと思うだけでバチバチに攻撃してくるじゃない?
これは一般人はまともに受けてられないよ。
僕がやるしかないってこと!」
言っていることはわかる、わかるけど、そんな簡単にそれを決められる先生に呆気を取られてしまう。
後退った先はふかふかなベッドで、私はしまったと思いながらそこで最後の一歩を耐える。
消毒された新品なシーツのにおいがする。

「で、で、でも…それってダメですよね…?」
先生と生徒の関係という点でも、そしてお互い知り合ったばかりでそういう気持ちがないという点でも、おどおどと断る理由をなんとか探す。
「なんで?」
「なんでって……!!」
背をぐっと屈めて、顔が近くなる。
そのまま私の両手を自分のそれに重ねて絡めると、楽しそうに
「僕は光栄」
と爽やかに言われた。

「あの、あの…でもそういうのって、順番が…」
「大丈夫大丈夫、大人になったらカラダから始まる恋もあるから」
「あぁ…そういうことではなく…」
一気に顔が熱くなる。
どうしたらいいかわからずに、その状態のまま目をそらすことしか出来ない。
「僕が自分の意思で、そうしたいって、今更言っても信じてくれないか」
「……」
「絶対に一人にしない」
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