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【短編集】倉庫【雑多】

第5章 クロユリ2(五条悟)


「よしよし、もう泣かないよ~」
「……っ」
「ほら、これあげる」
「…なに、これ…?」
「君を守るように、おまじないした指輪」
「…ありがと…」




「思い出した?くれたヤツ」
「……先生、だったんですね」
公園の風景が重なって、よく思い出せた。
なんでこんな大切な思い出を忘れていたんだろう。
自己嫌悪してしまうほど、大切だったことなのに。

「じゃあこれも先生の呪術…?なんですか?」
「いや?」
「………」
あっさりした否定にその楽しげな表情を見た。
「僕はほんの少し、触っただけ」
「え?」
「だからこれは違う誰かの力でそうなっている。
そして参ったことに、これは力を吸い続けて大分厄介な物体になってしまった」
「そんな…」
先生の声が段々と低くなる。
「これは確かに何故か君を守るような力がある。
でもこれは、凄く危険だ。
やがて君自身を取り込み、また失うものを増やしていく」
「……」
「もう、壊すしかないよ」
「……」

また一つ、大切な物が私の腕をすり抜けると思うと、悲しみよりももっと深い虚無のような気持ちになった。
優しく諭すように言ってくれているのに、またそれは深く私に刺さる。
この思い出を守るために一人になることはいくらでも可能だ。
それでも私はもう、自分の周りからまた誰かがいなくなることが嫌だった。
あの悲しみが次襲ってきたら、私も自ら命を断つだろう。
意を決し、その道しるべになる方法を聞こうと口を開く。
「どうしたら、いいですか?」
その言葉はどこか喉につっかえるように出て、少し離れた先生に聞こえるかわからない。
それでもにこっと唇に弧を描き、聞こえていると合図してくれたかのようだった。

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