第5章 クロユリ2(五条悟)
繁華街のギラギラした灯りを見るのは随分久しぶりに感じた。
おばあちゃんちも町の外れにあったし、あのボロのお部屋も明るいところとは正反対な位置にあった。
出来立ての料理と、一緒に食べてくれる人がいることに感激してしまって、鼻がツンと痛くなる。
「また泣きそうなの?」
「…すみません…」
「我慢しなくていいよ」
またもう一度謝ると、少しだけその言葉に甘えることにした。
ずっと我慢していたけど、私は自分でも知らないうちにとても寂しがり屋になってたらしい。
「いつもは車なんだけどね、今日はもう一つ用事があって」
「…はい」
デザートの余韻に浸りながら、なんのことだろうと首を傾げて次の言葉を待った。
「お散歩しよう」
道は上り坂が増え、小高い丘に進んでいるように思えた。
木が鬱蒼と茂る暗い公園に辿り着く。
「公園て心霊スポットが多いの知ってる?」
「そうなんですか…?」
「そう。建物を建ててはいけないところに公園を作る、という話もある」
先生の口調が楽しげなものから少しだけ真剣みを感じ始めた。
「……!」
「だから結構多いんだ、こういうの」
公園の真ん中にある大きな石碑から、ぬるりと蛞蝓のような生き物がこちらを睨む。
「君にも見えてるってことはなかなか強烈だね」
先生は私の前に立って、守るように先制攻撃を仕掛けた。
それに反撃するように、それは長い触手のような物を伸ばす。
先生はそれが当たりそうなところでさっと避け、後ろにいた私にそれが当たる手前。
「きゃっ…!!!」
悲鳴をあげると同時に、バチバチと青い稲妻が私の周りを囲んだ。
「な、なにこれ…!!?」
状況が飲み込めずにいると、先生は少し離れたところでにこにことまた笑っている。
「本当に吸い込んでるね!」
「す、吸い…!?」
混乱して思わず言われたことを鸚鵡返ししてしまった。
また飛んでくる攻撃も、身構えても痛みも衝撃もない。
ただ青い光が放たれるだけ。
光のもとを辿ると、大事なその指輪だった。
「そう、それそれ!
それが君が受ける呪いを吸い込んでる!」
すごーい!というその声に若干拍子が抜けた。
「それが見たかっただけ」
表情は見えないけど、声だけで嬉しそうなのがわかった。
次の瞬間には目の前の怪物は塵となって砕けた。