第5章 クロユリ2(五条悟)
「全く、厄介だなー。
折角助けたお礼でもして貰おうと思ったのに。
ほんとに誰だこんなの送ったヤツ」
大好きなお父さんのお葬式が終わって、おばあちゃんのおうちに行くことが決まった時、涙が止まらなかった。
お気に入りだった家も学校も、全部なくなってしまった。
幼心にお母さんに迷惑をかけたくないと思っていたのか、私は公園の隅で一人でずっと泣いていた。
「よしよし、泣かないよ~」
何故か思い出せなかった、綺麗な瞳。
釘付けになったのを今は鮮明に覚えている。
「これ、あげるから、ね?」
奇しくもそれは、今、私がつけている指に、同じように青い偽物の宝石をはめてくれる。
「これが君を守るよ、だから…」
懐かしい思い出。
これをくれたヒトも、綺麗な瞳をしていた。
先生は長く白いまつ毛を何回かぱちぱちさせてから、ふー、と小さく息を吐いていつもの明るい口調になる。
「そんなことより、僕今日久しぶりにオフなんだ。
ここのご飯は飽きたでしょう?
ちょっと町に行って食べよう」
「え…!」
急な提案に頭が追いつかなったが、いこういこうと大声でリズミカルに言われ、そのまま腕を引かれて連れ出された。
私の意思は、特に関係ないらしい。