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【短編集】倉庫【雑多】

第4章 クロユリ(五条悟)


「最強の僕でもダメそうだ」
不思議なことに、楽しそうに笑っていた。



現在私がいるのは寮制の高校の一室で、更に呪術に関して習うところだと聞いてあまりの胡散臭さにとても変な顔をしてしまった。
「それ全部本当ですか?」
と何回質問したかわからない。
「君の住んでいたアパートも強い呪術がかかっている。
やたら多くなかった?デカい虫とか」
「う…はい…」
大きめの黒い虫はもちろん、百足や白蟻までやたら大きな物とよく対峙していたのを思い出した。
古いから仕方ないと諦めていたけど、寝ている間に布団に入っていたりすることもあり、居心地のいい場所ではなかった。
「そんでトドメに出てきた目玉もいただろう?」
「あれも、呪いなのですか?」
「そう」
明るく元気よくそう返事され、眉間にしわが寄る。
あんな化け物…普段から見ているのなら、と少しだけ信じてしまった。

「そして」
私の手を取り、綺麗な長い指を絡められた。
おとぎ話のお姫様にそうするように、私の指にそれをはめる。
「この指輪。ずいぶん強烈だねぇ。
あそこから感じたのはこっちだったんだけどね」
このヒトはそもそも、私の指輪の強い呪いに惹かれて、ふらっと立ち寄ったそうな。
そこでたまたま私と化け物に出会った、らしい。
「…誰かから貰ったんですけど、思い出せなくて…」
「ふーん、相当強いけど、どんなヒトにどうやって貰ったのかはわからない?」
私の指とそのヒトの長い指が絡んで、なぜか背中にひんやりしたものが走る。
「えっと…、私が引っ越しする時に、別れ際に…」
「ふーーん」
私の話を聞いているのか聞いていないのか、適当な相槌が打たれた。
その間も私の指の関節一つ一つ、手のひらから手の甲をゆっくりと撫でられる。
寒気がしてくるのに、鼓動が速くなって少しずつ火照ってくる。
「私を守るから、って…」
「なるほどね」
耳元で低く囁かれて、いよいよ私は自分の身体の変化を認めるしかない。
「っ…!」

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