第3章 ロベリア3(ダンデ)
上半身の下着に手を掛けられたところでやっと、
「ま、待って!」
と声を上げられた。
「そ、そこは、恥ずかしいので……」
流石に止めてくれるだろうと思ったのに、また無視される。
「一緒に風呂に入っただろう、懐かしいな」
「ふえっ!?」
そんなこともあっただろうか…?
意識してない時期というのはかくも恐ろしい…。
「そうそう、るるが確かうちの庭で漏らして…」
「や、やめてくださいっ!」
あまりの恥ずかしさに上体を起こし、折角の厚意をなんとか止めさせようとした。
それがよくなかった。
視線が合うと、大きな両手で頬を挟まれ、更によくみろと言わんばかりに顔を固定される。
逃げ道を完全に失った。
いつもの優しいお兄さんの顔はすっかり消え、いっそ恐怖すら覚える。
「ひっ……」
逃げられないのを感じた脳が悲鳴をあげる信号を出す。
袖からするりと腕を取られ、そしてふわりと枕が後頭部を包む。
いらない蓄えられた知識のせいか、それとも動物的本能か。
恐怖心が和らぐとむしろ興味の方が強くなる。
結局、好きなんだ。
拒否出来る状態でもない。
もしかしたら、望んでいたかもしれない。
恐怖心はもしかしたら、違う心情なのかもしれない。
そういえば、恐怖心とそれはよく似ていて、勘違いしてしまうこともよくあるという。
きっと、そうかもしれない。
誰に言い聞かせるでもなく、震える手で彼のそれを握り返す。
懐かしい思い出が上書きされていく。
幸福感よりも勝るのは羞恥心。
見られるのも、触れられるのも、恥ずかしく思える。
今まで出したことのない甘えた声が自然と出てしまう。
何が答えなのかわからない。
誰も教えてくれないから仕方ない。
ただ、初めてバトルした時のように、優しく、
「それでいい」
と褒めてくれる。
それが死ぬほど嬉しくて、泣きそうになりながら頷いた。
他人を受け入れるのはあまりにも痛く、やはりそこは怖かった。
大丈夫、という優しい声なのに、熱い獣のような吐息にふとした色気があって。
私の知っている人なのに知らない一面で、それが少しだけ怖かった。