第3章 姥桜参上!
「あら?この殿方が明日香のいい人なのですか?」
艶やかな桜色の着物を優雅に纏い、凜とした佇まいの女性が明らかに俺を睨みつけている。
ただならぬ雰囲気に圧倒される。
「あ、貴女が姥桜の精ですか?
は、はじめまして」
俺は気後れしながらも挨拶をした。
(これで350歳なのか?人間なら三十半ばくらいだな?)
腰まで届く髪は、正に緑成す黒髪、端正な顔立ちに切れ長の目、何もかも見透かしてしまいそうな漆黒の瞳…。
明日香が憧れると言うだけはある。
これだけの美人はそうお目にかかれない。
がしかし、彼女の表情は険しいまま、明らかに俺を敵視している。
「明日香、こんなどこの馬の骨かも分からない腑抜けは認めませんよ」
俺を指差して言い放った。
「ふ、腑抜けだとっ!?
ちょっと待てよ!おばさん!」
「あら?貴方に叔母呼ばわりされる筋合いはごさいませんわ!」
(いや、その叔母じゃないんだけど…)
「…腑抜けってのは訂正してもらおうか!」
俺も怯まず強めに言い返した。
俺と姥桜の精が睨み合っている間に明日香が割り込んできた。
「一八さんも叔母さまもぉ、恐い顔してたら桜が可愛そうですよぉ」
一触即発な雰囲気だと言うのに、明日香はのほほんとにこやかだ。
自分が原因の一端だとは、まるっきり思ってないな。