第6章 明日香の苦悩
「なんか最近平和だな」
明日香と桃太の散歩しながら呟いた。
「桃太ちゃん、こんにちは」
だいたい毎日、桃太の散歩をしてるので、犬好きな人には声を掛けられる。
しかもピンク色だから、近所では有名犬となっていた。
ピンク色の桃太を珍しいと寄ってくる人もいれば、なんか避けている人もいる。
「何でピンク色?」とよく聞かれるが、「突然変異みたいですよ」と苦しい誤魔化ししか言えない。
しかし、犬好きな人とそんな話をしてる時は明日香は寂しそうに見てるだけだ。
さすがに人がいる時に見えない明日香と話す訳にいかない。
それは明日香もよく分かっていて、少し引いて見ている。
(何とかしてやりたいけどな…)
犬好きと別れていつもの桜の木の下に着いた。
「なぁ桃太、大きさ変えられるなら色も変えろよ」
ベンチに座って桃太にぼやいた。
桃太は尻尾を振りながら、色を黄色に変えた。
「えっ!えぇ~!
お、お前なぁ!今頃変えるんじゃねぇ!」
桃太はまたピンク色に戻った。
俺は頭を抱える。
そんなやり取りを明日香はにこやかに見ていた。
「ウフッ♪桃太は一八さんの事がぁ本当に好きなんですねぇ」
明日香が笑顔なら桃太の色くらいなんでも良いかと思った。