第8章 不死川実弥 □ 絵空事
「ねぇ、実弥さん。」
「……なんだよ、文は書かねェぞ?」
「違うよ、幸せだと思って。」
肩は少し痩せたが、私の頭くらいないなら何の問題も無いのだろう。__トン。と寄り添うように頭を乗せてもぶれることなく彼は真っ直ぐ前を向いている。
「………そうかィ。そりゃ、何よりだ。」
面倒くさそうにそう答える彼は、私が触れるとすぐに耳が赤くなる。
「実弥さん、実弥さん。」
「なんだよ、るせェな…。」
ぶっきらぼうだけど、振り払う事は決してしない。
「……今日も実弥さんがいっとう好きだよ。」
「…そうかィ、耳にタコができそうだ。」
「何それ酷いっ!!」
「毎日毎日、飽きねェのかァ?」
茶化す様にそう言って分厚い手で頭を撫でてくれる貴方が愛を言葉にする事は滅多にないけれど。
「飽きないよ、死んでも飽きない。」
「……くくっ、物好きが。」
何となく、全部伝わる。『この人は不器用だ。』なんて思っていたけれど、多分凄く器用な人で愛を伝えるのがいっとう上手なんだと思う。