第27章 不安と過去とそれから未来

「…柚樹さん？どうしました？」

柚『…んー？何だか凄く愛おしくてね。』


その可愛さに絆された柚樹はそっと覆いかぶさって顔を近づけたのだが。


「……ね、…ねぇ柚樹さん、笑ってますよね？
押し倒しながらそんな震えないで下さいよ。」


柚樹は口をへの字にしてなんとか笑いを耐えている状態だ。


柚「ん”……御免。む、無理だ。
その顔で不貞腐れないでおくれ……。」


いや、が気持ちは分かるし怪我の度合いも分かっている。ソレに関係も変わったので口吸いの1つでもと念願叶って押し倒しているこの状況で笑わう訳にはいかないのだが、柚樹はどうにも耐えきれないようだ。


「…ふふっ。…珍しいですね、その顔。
…なんか私、ご機嫌になっちゃいました。」

柚「い、色々と本当に複雑な心境でねぇ。
………ほら、お腹は空いているでしょ？」


まあ、が楽しそうならそれでいい。

そんな事を思いながら柚樹がの手を引くと素直にちょこちょこ後ろを着いてきた。


「柚樹さん。」

柚「ん？なんだい？」


着流しの裾を引っ張りながら不安げな声を上げたので柚樹はそっとしゃがんで目線を合わせると気まずそうに目線を下げながらがボソボソと呟き出した。



「…あの、女遊びは嫌です。」

柚『(………こんな事言ってくれるんですか。
頭では分かっていましたが……嬉しいですね。)』


”私だけに。”と変換できる物言いは関係が変わった証明になってその嬉しさに柚樹は目を見開いた。

だいぶ無理矢理だったが、本当に受け入れてくれている事実と可愛らしい我儘に浮かれた心地になる。