第12章 *X染色体 時透無一郎
『前田さん…』
「どうしたのですか?時柱様」
時柱は深刻そうな面持ちで前田まさおの元に訪れた。
前田まさおは隠で鬼殺隊、服縫製係である。
一見この二人にはなんの接点もないのだが、
時柱の大抵の悩みは無一郎のことなので共感を得てくれる数少ない理解者なのだ。
『それがね…最近未来人から頂いたごすろりと言うものをね…無一郎君に着てほしくて…』
「ほうほう…」
『それで、布団の上に置いたの着てくれるようにって
そしたら無一郎君…その綺麗な服を破り捨てたんだよおおお』
泣きわめく彼女に前田は痛みがわかるというように何度も頷いた。
「わかりますっ!!その痛みが!!
せっかく用意した隊服…蟲柱様は目の前で燃やしやがってっ!!」
チクショオオー!と嘆く前田には肩にそっと手を乗せる。
『だよね、だよねっ!!無一郎君なんて絶対似合ってたはずなのにっ!!…なんなら、髪の毛をちょっと弄ってツインテールにして!!』
二人の話はやがて盛り上がり白熱する。
そんな二人を哀れむような目で見やるは時透含むかまぼこ隊。
「ときに…時柱様…前回お渡しした隊服は…恋柱様と同じような作りの隊服着てないようですが」
『そう!あの服とても可愛くて、早速無一郎君の前で着替えようとしたんだけどね!!』
ふと思い出したように、眼鏡をキラリと光らせ、話をふる前田。
も被害者の一人だったのだ。
華奢な体には似合うだろうと、胸元がハート型にあき、ミニスカの隊服をに渡したはずなのに、今着てる隊服は至って普通で。
「……僕があんな、ハレンチな隊服
許すわけないでしょ?」
いつのまにか、前田の背後に立ち
プレッシャーをかける時透無一郎。
ひいいいと怯える前田はペコペコと頭を下げると足早にその場を去った。
「…変態が移るんだから、あいつとは関わらない方がいいよ」
『無一郎君が望むならっ!』
その場にいた全員は思っただろう。
もう、手遅れだと。
無一郎の事になるともゲスメガネに劣らず中々の変態であるからだ。
そんな周りとの温度差に気づかずに、二人は楽しそうに談笑する。そして、夕刻時今日も鬼狩りのため鎹烏に案内される。