第11章 *抗えない(運命)2時透無一郎
僕を助けなければまだ生きられたはずなのに。
痛む体にむち打ちながら、僕を助けるなんて…。
『無一郎さん、泣かないで?悲しまないで?っ…私は貴方に愛されてとても幸せでした…ありがとう』
彼女の体を抱え込んだ。
これ以上消えないようにと
けれども、現実は厳しくて
腕の隙間からさらさらと消える白い砂。
「っ…いかないで」
ありがとうとにこり頬笑む彼女を最後に腕の中の温もりは消え失せた。
もういない腕の中の温もりに縋るように自身を強く抱く。
「ああああああああーーー!!!」
その声は悲しみの咆哮のごとく
空気を震わせるも
なにも起こりはしない。
愛する事を知った
愛される喜びを知った
はもうこの世にはいないけれど、思い出は消え失せることなく無一郎の胸の奥で輝いていた。
今日も平和の為に鬼を狩る。
今度こそ鬼のいない世界を願いながら。