第9章 *極悪非道 時透無一郎
「はい、プレゼント…これで君は自由だよ??」
袋の口を開けば、腐敗した臭いと生臭い鉄の臭い。
強烈な臭いで鼻が曲がりそうだった。
開いた口を逆さまにし中身を取り出せば
ごろんと黒い物体が床に転がる。
「ほら、目を瞑ってないでちゃんと見なよ…僕頑張ったんだから」
絶対見たくないっ!
この腐敗臭が全てを物語っている。
頑なに目を開けない私に無一郎は
痺れを切らしたかのようにわざとらしくはぁーとため息を吐くと私の頭をわしづかみにし
ぎりぎりと手に力を込めた。
『痛い痛いっ…』
「なら、ちゃんと見なよ」
痛みから逃れるべく、何度も頷くと痛みから解放される。
『っ?!お、おええぇっ』
恐る恐る目を開けば、目が白く濁り、顔の原型が保てない程殴られたのか歯が何本も抜けた父親の首がこちらを向いていた。
吐き気が込み上げてきて耐えきれず嘔吐する。
「…大丈夫?」
背中を撫でられるも
その手つきさえ気持ち悪い。
払いのける気力はなく
何度も何度も胃が空っぽになるまで吐き続けた。
「やっと、落ち着いたみたいだね?
おじさんの事は残念に思うけど、悲しまないでね?…これは罰だよ
…僕とを引き剥がした罪は重いから」
『っあはっ…』
部屋に響く女の笑い声。
現実を受け止められず、まるで壊れたビデオテープのように笑い続けた。
瞳から溢れた涙は何度も頬を伝い
女の目から光が消えていった。
「…壊れても、ちゃんと愛してあげるからね」
無一郎は壊れた彼女を抱き寄せ
誰にも取られないように包み込んだ。
もう逃げられないように、逃がさないように。
精神崩壊した彼女はやがて鎖を外されても無一郎の傍から方時も居なくなることはなかった。