第35章 疑惑 時透○一郎
大丈夫?と君は私に聞くけれど、何が大丈夫なのか、私が誰なのかわからない。
目が覚めたら簡素で真っ白な病室にいて、警察、医師や看護師に何度か質問された後自分が記憶を失ってるのだと教えられた。
幸い、日常生活の支障はないからと退院はすぐに出来たものの、知らない場所で一人寂しく暮らすのも何だか落ち着かない。
そんな時、君は慌てた顔で訪ねてきて私の身の回りの世話をすると言い出した。
彼の名前は時透無一郎。
私と彼は幼馴染でもあり恋人でもあるらしい…けれど、どこか懐かしい気はするのにピンとこなかった。
私の両親は既に他界してて、一人暮らしだと彼は言った。
車に跳ねられて頭を強く打ち、そのせいで昔の記憶を忘れてしまったのだと。