第34章 *スカビオサの花言葉時透無一郎
「妊娠するよ…この薬は受精率高めるからね」
開いた小瓶を目の前に翳し、くつくつと込み上げる笑みを押さえきれないでいた。
やっと手に入れた。
可哀想な。
とても愛おしい。
薬で君は真実を思い出せないし、僕から離れることもない。逃げられはしないのだから。
この薬を作ってくれた、胡蝶さんにも後でお礼を言わないと…。
全ては、君を手にいれるため。
いつの間にか雷雲は遠退き、青白く光るお月様が、縁側を優しく照らしていた。
銀子に頼んで、胡蝶さんへと手紙を送り
汚れたの体を清める為、手拭いとぬるま湯を用意するべく立ち上がる。
青白く照らす、の体を無数の赤い花が咲き乱れる。
すやすやと眠るの脳は少しずつ、侵食されもう思い出すことはないのだろう。
それでいい。やっと君を手にいれたのだから。