第25章 何を犠牲にしても 時透兄弟
鬼になったの。
人を食べ醜く歪んだ悪鬼に。
人の想いを踏みにじって生きる化物に。
私は昔から病弱だった。
肺を患っていた。
元々、都会生まれの私は少しでも空気の良いところにと山に越してそこで時透家と巡り会えたのだ。
歳も近かったこともあり、唯一のご近所さんと言うこともあり仲良くなるのに時間はかからなかった。
病弱な私に彼等は珍しい形のした木の枝や、綺麗な色の花等よく見せてくれていたっけ?
体調が良いときは、家の周辺だけれども散歩したりもした。
そんな幸せな時間はあっという間に、形を崩し笑顔だった日々は微塵も残らない姿へと変貌した。
そう…無一郎、有一郎のお母さん、お父さんが続けざまに亡くなったあの日から。
それでも、二人は毎日のように遊びに来てくれていた。
あの日から変わったことと言えば、ぎくしゃくした二人の関係。
とても悲しかった。無一郎と有一郎の笑顔が好きだったのに。
そんな日々が続き、時は巡って初夏が香る季節になった。
無一郎と有一郎が明日、伝えたいことがある。そうどこか照れ臭そうに笑うのはいつぶりだろうか。
とても嬉しかったのを覚えてる。
けれども、待てど暮らせど二人は会いに来てくれなかった。お母さんやお父さんに話を聞いてもはぐらかすばかりで不信感が募っていった。
そして、日に日に弱っていく私は
とうとう歩くことさえままならず
余命も後僅かのところで無惨様と出会ったのだ。