第2章 *無意識からはじまる愛情 時透無一郎
『っ…』
身体中あちこちが痛い。
股から伝う精液が気持ち悪い。
視線を横に動かせば無一郎はまだ寝ているようだった。
今しかない。今がチャンスと痛む体に鞭をいれ、無理矢理立ち上がる。
静かに出来るだけ物音をたてないように家をでなければ。そして、無一郎と会ったとしても前のように接してればきっと、すぐにこの事を忘れるだろう。
歩く度に床に垂れ落ちる精液。
汚された体を早く清めたいと思うけれど今はここからでるのが先決だと自分に言い聞かせ、玄関に向かう。
「ねえ、逃げようとしてるの?」
『っ…?!』
いつの間にいたのだろうか。
冷めた声に振り返れば、上半身裸の無一郎が壁を背に凭れかかっていた。
「やっと、僕のモノになったんだから…逃げるなんて馬鹿な考えは捨てることだね」
つかつかと歩み寄り、を抱き寄せる無一郎の瞳は何を映すのか。
もう逃げることはできないと悟る女の涙を男は嘲笑いながら拭うのだった。