第15章 夢見心地のお姫様 時透無一郎
ちゅっ…と重なった唇はどこか甘く
顔を離す時透君は苺のように頬に赤みがさしていた。
「これから間違わないように、僕が教えてあげるからね」
くすりと笑う時透君に恥ずかしすぎて穴があれば入りたいという気持ちになる。
そんな私に、時透君は手を強引に掴み握りなおすとにこりと笑った。
『…時透君って兄と似てるってこと?つまり双子?』
「うん、だけど…好きなくせにまさか僕と兄さんを間違えてるなんてね」
『すみません…』
手を繋ぎながら、帰り道を歩く。
時透君には兄がいて、双子そして同じく将棋部とのこと。
彼女と対面してたのは兄の方で
時透君は私からは死角で見えなかったらしい。
私に気づいた時透君は部活が終わると同時に駆け寄ろうとしたけれど、時透君も女子に囲まれてしまい近寄れず、私は兄の方を見ていたから気づかないとお互いタイミング悪く招いてしまったスレ違い。
けれどもこうして追いかけてくれて、気持ちも通じ合えたわけだし…結果ハッピーエンドにたどり着いたと思う。
自分で自分を決めつけていた。
意地悪な魔女でも、愛することを知らないわけでもなかった。
私にも王子様がいて、愛されることの意味をこれから知っていくのだろう。
重なる影に、今度は目を見てハッキリと伝える。
時透君が好きだと告げれば
返事の代わりに甘い口づけが1つ送られる。
二人を包む甘いひととき。
日が暮れて、外灯が灯り始める。
ひっそりと二人を照らした。
これから歩む重なった二つの人生の道標にスポットライトが照らされるのを夢を見て残りわずかな帰り道を並んで歩くのだった。