第1章 時の流れ
――大丈夫、私が必ず君を長く生きさせるから――
…誰だっけ?
泣きながら僕を抱き締めたのは
…いつだっけ?
その言葉を言われのは…
ああ、やっぱり…思い出せないや…
――――――
朝日が上る
朝が始まると同時に任務の終わりを告げた。
頸を切られ灰となっていく鬼
消えていく鬼に何の感情も抱かないまま、消える様を見届ける。その瞳は霞んで何を映しているのか。
今回の任務も柱が向かうわりには大したことなかった。
なのに鬼殺隊員が数十名行方不明だったのは、やはり隊士の質が下がってるからなのだろうと時透無一郎は思う。
「屋敷に戻らないと…」
睫毛の長い鎹鴉に任務完了を告げ、屋敷へと足早に向かった。
――――
『無一郎ーーー!!!お帰りーーーー!』
「…」
『あれっ…聞こえてなかったのかな??無一郎ーーー!!!「うるさい」…はい』
屋敷に戻れば明かりは既に点いていて、戸を開ければ
語尾にハートがつきそうなくらい大きな声で出迎えられる。
怪我はない?お腹は空いてない?寂しくなかった?と
任務が終わる度に繰り返される質問に大丈夫と返せば彼女は安堵の笑みを向けた。
「碧天も任務だったでしょ?」
『そうなの!!でも無一郎に早く会いたくて、直ぐに終わらせてやったわ!!』
碧天と呼ばれた少女は、無一郎に早く会いたいという一心で任務を終わらせたと本人に告げるが
無一郎はさして興味無さげな返事をした。
そんな冷めた彼の対応にも、彼女は特に気にするわけもなく
無一郎今日も可愛いねと、彼を抱き締め会えなかった空白(と言っても三時間程度)を埋めるように自分の気のすむまで(約一時間)匂いを堪能し
いい加減、離してくれない?と彼の一言で体を離した。
『だって、無一郎いい匂いするんだもん』
「変態」
染まった頬に手をあて、もじもじする彼女を通りすぎ
自室に入る。
戸を閉めた数分後に碧天の気配が消えたから、きっと部屋に戻ったのだろうと無一郎はさしてきにすることもなく仮眠をとるべく眠りついた。