第2章 ***
(…気持ち悪い……)
昼間汚い手で触られた体をシャワーで洗い流す。
私は都内にある名門男子高校で、図書館の司書として働いていた。
けれど"名門"とは名ばかり…
生徒たちは悪い子ばかりじゃないが、中には親のコネで裏口入学している者もいる。
そう…腐っているのは生徒ではなく教育者の方だ。
学校に多額の寄付をしている家の生徒を贔屓する校長。
外では派手な女遊びをしていて、司書の私にまで言い寄ってくる教頭。
いつもは軽くあしらっているのだが…今日はやたらしつこく、挙げ句の果てには腰やお尻を撫で回してきた。
(…本当…最悪……)
仕事中は眼鏡にグレーか黒のスーツ、髪は野暮ったくひとつに纏めているだけという地味な格好をしているのに、そんな私にすら言い寄ってくるなんてあの男は根っからの女好きなのだろう。
これ以上エスカレートするようなら、転職も視野に入れなければならない。
(まぁ…"こっちの仕事"に専念するのも悪くないけどね…)
私のもうひとつの顔…それは所謂"SMの女王"だ。
昼間は図書館の司書…夜はネオン街の蝶。
いや、蝶というよりは"女王蜂"と言う方がしっくりくる。
このアルバイトを始めてもう3年になるが、今も続けていられるのは高時給だから…という事だけが理由じゃない。
単純に、私が男を苛める事に快感を覚えるから…
ここには色んな客が来る。
それこそ政治家や医者などのお堅い職業の人なんかも。
そういう客はお金も持っているし、私とのプレイを気に入ってくれればリピーターにもなってくれるので一石二鳥だ。
たまにはこちらが引いてしまうような変態もいるけれど。
(さて…今日はどんな客が来るかしら……)
シャワーを浴び終えた私はいつも通りボンテージスーツに身を包み、カツカツとヒールを鳴らしてプレイルームへ向かった…
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