第5章 番外編2
「分かりづらい兄弟だなぁ」
ぶつくさと文句を垂れながら、俺の旦那様…ユイは頬杖をついていた。ここは、ホップたちの新居であり、ようやく引越しも終わりを迎えた…そんな時に零した言葉だった。
「何が分かり辛いんだ?」
ホップが笑いながら、俺たちにコップを渡した。ユイは半ばふくれっ面になりながら、
「ホップもダンデさんも、そんな素振り一切見せなかったじゃん」
と言った。俺はそうか?と首を傾げていると、同じ行動をホップもしていた。
「俺はマサルの方が分からなかったけどな」
そうホップが言うと、後ろから笑う声がした。
「だって、ホップはチャンピオンの弟じゃない。絶対にいい顔されないから黙っててくれって泣きつかれたのよ」
「よく言う。ダンデさんが好きなことをばらされたくなかったら、ホップに猫かぶってること言うなって脅してきたくせに」
この双子は顔を合わせると言い合いをするなぁと、もう慣れた光景にホップと顔を見合わせて苦笑する。
「ほら、ユイもう止めろって」
「ユイもだぞ。今日は手伝いに来てくれているんだからな」
つい、いつもの調子で名前を呼ぶと、ユイという名前が重なり、みんなで苦笑を零してしまう。
「すみません、チャンピオン。騒がしくしてしまって。大変でしょう、弟の相手をするの」
「ホップこそ、大変でしょ? 子供の頃と何も変わらない姉貴と常に一緒でさ」
再び言い合いになりそうになるので、慌ててホップと止めに入る。俺の腕の中で暴れるユイを見て、俺はふとあることを思いついた。
「そういえば、ユイさん。俺はもうチャンピオンではないぞ。今はただのオーナーだからな」
そして、俺はそういえば…という顔をする彼女にこんな提案をした。
「だが、少しチャンピオンとしての心残りがあってな。頼まれてくれるかい?」
それは、彼女にバトルを申し込むことだった。