第4章 ホップ編
「ま……待って待って待って……!!!!」
彼女の慌てた声に、俺は頷きながら言葉を待った。ユイは俺が握った手と俺を交互に見比べ、そして口を開いた。
「あ、あれって冗談じゃ…」
「違うぞ。成人したらもう一度言おうと思ってたんだぞ」
だって、ずっと一緒にいるためには成人してからじゃないとできないからな…そう俺は笑った。その言葉に、ユイは目を見開いた。
「カジッチュを送り合う仲って、つまりは片思い同士ってことだろ? 俺はもうユイと…ユウリと…両思いのつもりでいたからな。だから、あの時違うと答えたんだぞ」
「な……え……?」
言葉を詰まらせるユイの前で、俺は片膝を付いた。ポケットから小さな箱を取り出し、ユイの前でそれを開けた。
「ごめんな。ユイはもう吹っ切れていることかもしれないけど、俺は諦めきれないんだ。あの時思いは変わってないんだぞ」
ポロポロと涙が溢れるユイに、俺は震える唇を開けた。
「好きだぞ。気が強くて、優しくて、いつも俺のことを考えてくれるユイがいたから、俺は夢を見つけることができたんだ。こんな俺を励まし続けてくれて…支えてくれてありがとう。今度は俺が……ユウリを支えたいんだぞ」
ユイの両手が俺へと伸びる。そして、箱から指輪を取り、左の薬指にそれをはめた。銀色の光が太陽と反射してきらりと光った。
「私も……ホップを支えたい。よろしくお願いしま…ホップ!?」
俺はたまらずユイを抱き上げた。周りの声なんて耳に入らなかった。ただただ嬉しい気持ちが心から溢れ出た。
「辛い思いさせてごめんだぞ。大好きだユウリ」
「…私も好きだよホップ」
ユイが嬉しさで引き攣りそうな頬にキスをひとつ落とした。俺はわざと頬を膨らし、ユイはきょとんとする。少し意地悪をしてやろうと思った。俺はそのあとちゃんと結婚しようとまで言ったのに、幼い頃の冗談だと思われていたんだから。だから、俺はユイの身体を抱き寄せた。
「ずっと思っていたんだぞ。頬じゃ物足りないって」
そして、慌てるユイに笑いかけながら、俺は彼女の唇と自分の唇を合わせた。これでようやく、俺と彼女の恋物語は完成したのだった。