第2章 ダンデ編
「嫌いにならないだけでいいのか?」
俺はそう彼に問うた。話の内容が支離滅裂だ。結局、君は俺にどうして欲しいんだ? せっかく、マイクを持って勇気を出してくれたのに、嫌いにならないでとは…お願いはそれだけでいいのか? 新チャンピオンは俺の顔を見て、そして首を振った。
「………俺が大人になったら…結婚してください…!!!!!!」
俺の手を両手でしっかりと握りしめ、震える声で俺にそう伝えるユイ。マイクが下に落ち、その音が会場に響き渡るが、彼が何と言ったのか会場中が聞こえたことだろう。
俺は思わず笑みを浮かべた。ざまぁみろ、と。この俺を長年待たせ、さらにはまた長年待たせる罪は重いぞ。だから、俺はこの小さな子供に意地悪をすることに決めた。散々振り回されたんだ…このくらいしたっていいだろう。俺は余った手でユイの頭を乱暴に撫でた。
「なら、俺を攻略してみろチャンピオン」
そして、俺はスタジアムから立ち去った。無音だった会場が大盛り上がりを見せること…10秒前のこと。
「……やってしまった…。これは後でキバナに叱られてしまうな」
俺はその場に座り込み、大きなため息をついた。だが、後悔はしていなかった。俺もまた、彼が俺を思うように…俺も彼を思っているのだから。
「これは……しばらく頭を冷やすしかなさそうだ…」
こうして、俺とユイの恋物語はここで幕を閉じたのだった。