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〜宵の中、蜜に酔う〜 《短編集》R18

第6章 最期の夜を君と飾る





「ここに、いて……」


「で、でも……っ」



呼吸器や点滴を外し、裕貴がベッドからゆっくりと起き上がる。


「ってて……」


「何してるの…っ?無理しちゃダメだよ……!」


慌てて駆け寄ると、裕貴は困った様に眉を下げてはにかんだ。


「大丈夫だよ。わかってる。俺……今日で死ぬから…」


「……っ」


『今日で死ぬ』。その言葉を聞いて、心がずきりと痛む。


「莉亜…、もっとこっちへ来て。」


伸ばされた手を取り、裕貴の隣へ寄る。


「裕貴……、んっ?」


突然身体が引き寄せられ、唇に柔らかいものが触れる。

気が動転して何も出来ずにいると、ぬるりと口の中に何かが入り込んできた。

「んんっ……ぁ…」


ちゅっとリップ音を響かせて互いの唇が離れる。


短い時間が、何十秒も長く感じた。頭の中が甘く蕩け、口の中にはまだあの感触が鮮明に残っている。



「ごめんな…辛い思いさせて…。最後の最後まで、莉亜を泣かせてしまった……」


ぐいっと目尻が裕貴の親指で拭われる。

いつの間にか、大量の涙が溢れていたようだ。



「裕貴……いかないで…っ。裕貴が居なくなったら…、私…っ、私……っ!」


「大丈夫だよ。俺が死んでも、ずっと見守ってるから……な?」



泣きわめく私を宥めるように、優しく頭を撫でる。



「莉亜……最後に俺の願いを聞いて欲しい。」


「…何っ?何でも聞くよ…っ?」



涙で濡れる目で、儚げに微笑する裕貴を見上げる。



「最後に……俺とお前の思い出を作りたいんだ…」



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