第6章 最期の夜を君と飾る
あの日から2週間と6日が経った。
私は毎日裕貴の病室を訪れている。
裕貴の意識が戻ることを願いながら…。
しかし、そんな願いが届くはずもなく、今もこうして裕貴はベッドの上で眠っている。
「裕貴……」
裕貴は余命が決まってしまった為、病院の6階の個室──助かることが不可能な人達が住まう階の部屋に追いやられてしまった。
部屋の中は私と裕貴だけ。心電図モニターの、ピッ…ピッ…という、無機質な音だけが部屋に響きわたる。
その音は、裕貴の死へのカウントダウンのようで、やけに悲しくなった。
そう、今日はあの日から1ヶ月。余命宣告日なのだ。
「お願い…裕貴……起きて……」
縋るような思いで、ベッドに突っ伏して裕貴の手を握る。
おはよう、って。どうしたの?って。
また……、あの頃みたいに返事してよ……。
今宵は満月。月明かりが儚げに病室を照らした。
それから、何時間が過ぎただろうか……。
ピクッ──
ずっと握り締めていた裕貴の手の指先がピクピクと痙攣する。
「……、ん……、っ!裕貴……っ?」
突然の裕貴の異変に慌てて目を覚ます。
「こ、これ……ナースコール…した方がいいのかな……っ?」
あたふたしていると、裕貴の指の痙攣が止み、呻き声が聞こえる。
「っ……」
「……あ……う、そ…………裕貴……?」
ゆっくり開かれた裕貴の瞳。最初は朦朧としていたものの、次第にその瞳は私を捉えた。
「……っ、莉亜……?」
自分の名を呼ぶその声に、涙が溢れて止まらない。
あれほど枯れたと思っていたのに……。
「裕貴…っ、私の事が分かるの…っ?待って…、今すぐ医者を……!」
「待って莉亜。」
大急ぎで部屋を出ていこうとする莉亜を、裕貴が呼び止める。