第6章 最期の夜を君と飾る
「好きだよ。」
「私も!」
……ずっと、こんな日常が続くと思っていた。
初めて私が愛した人。
好きで、好きで…たまに喧嘩もしちゃうけど、それでも大好きだった。
……あの日……私がデートに誘わなければ……。
私が死ねば良かったんだ……っ!
「莉亜……っ!」
ドンッ…
思いっきり裕貴に押された私は、バランスを保てず尻もちをつく。
「った…裕貴……?」
その瞬間だった。工事中だったビルの作業場から、大きな鉄柱が落ちてきたのは。
ガッシャァンッッ!!!
耳をつんざくような大きな音を立てて、私の目の前に鉄柱が落ちた。
「あ…あぁ…、いや……そんな……裕貴っ!!!」
私を庇って鉄柱の下敷きになった裕貴はすぐさま救急車で大きな病院に運ばれた。
緊急オペが開始され、何時間にも及ぶ手術が行われる。
「お願い…っ、裕貴……っ」
手術室の前で、両手を合わせて祈る。
私はどうなってもいいから……裕貴の命だけは…!
半日以上にも及ぶ長時間の手術は、幕を閉じた。
結果から言えば、裕貴は"今は"生きている。
人工的に心臓を動かし、どうにか延命をしているようだ。意識は戻らない。このまま戻らない可能性が高いらしい。
先程"今は"生きている、と言った。今は、とはどうゆう意味か。
なんと裕貴は、意識の有無に関わらず、あと1ヶ月の命しか無いのだ。
あの事故のせいで、身体の大部分を大きく損傷している。
今は無理矢理心臓を動かしている状態で、身体へのダメージは大きい。
どちらにせよ、裕貴が生き永らえる術は無いのだ。
「ごめんね…っ、ごめんねぇ、裕貴…っ」
泣いた。泣いて泣いて、泣き叫んだ。涙が枯れて一滴も出なくなるまで。
一生分の涙を出し尽くした。