第2章 旅館
なぜなら、その飲み物を買う為の自販機は一階。
6階にある部屋に泊まっている私達は、暗い道を通り、エレベーターに乗って行かなきゃ行けないからだ。
(今なら、二人きりになれたり……?)
男と女が夜中に二人きり。それに伊織はかなりの変態……いや、そもそもこの部全体がエロに汚染されていた。
去年までいた先輩の中には、読書用の本としてエロ本を持ってくる人もいたのだ。
だから、夜中に変態同士の男女が二人きりになったら何かあるのではと踏んだ私は、
「しょうがない、私が行ってあげようではないか。」
とあたかも下心が無いように言って、二人で部屋を出た。
「うわ暗っ!なんか出そ〜」
近くには海もある。出てもおかしくはないだろう。
「伊織先輩ビビりっすね〜。そんなの俺がぶっ殺しますよ〜」
「うっさい!私だって幽霊なんて平気だし!倒せるし!」
「へ〜……………………うわっ!!」
「ぎゃあっっっ!!!」
後ろからいきなり肩を掴まれ、大声を出されて悲鳴をあげる。
「あはははっ!ぎゃあって!色気ない叫びですね〜」
「うっざ!!」
話しているあいだに一階の自販機に到着した私達は、それぞれ好みの飲み物を購入する。
「じゃ、戻りましょう。」
伊織はそう言ってスタスタと歩いていく。
「む………………」
なんだこいつ。いつもは下ネタしか言ってないくせに普通じゃん。なんか負けた気がする。
グイッ
「うわっ…!なんですか?」
戻ろうとする伊織の腕を引き、ものかげに引き込む。
「ちょっと〜、真夜中に女と二人きりなんだからさ〜、なんかかんがえないわけ?」
自分より15cm程背の高い伊織に逆壁ドンを食らわせる。
「え…莉亜先輩……?何言ってんですか?」