第1章 出逢い
最近、気になるあの子。
高野真琴ーー。
まだ一方的に俺が知ってるだけ。たぶん…あの子は俺のことなんて知らない。
倉持の幼馴染みで、川上のクラスメイトだから俺は色々と情報は得られる。
スポーツ万能、成績優秀、男勝りで男子とも仲がいい。
でも、それで女子の反感を買うこともなくサバサバした性格で友達も多い。
倉持とは正反対(笑)
初めて見かけてたあの日から1週間見つけられなかったのが嘘のように、ソフトボールの試合後からはあの子がよく視界にいる。
…てか、俺があの子を探し、目で追っているんだけど。
廊下を友達と歩く姿、体育の時間、昼休み男に混じってバスケしてたり…元気な姿を見ていると、やっぱり気になるのは…あの日の涙のワケーー
ただ悔しくて泣くような子には思えなかった。
やっと1日の授業が終わり、練習着に着替えグランドに向かう。
いつも同じようにーー
「よーいちー!!」
誰かが呼ぶ声に倉持が振り返る。
倉持を下の名前で呼ぶヤツなんて…
思わず釣られて俺も振り返った。
「おう。真琴か。」
やっぱり…あの子、高野真琴がTシャツにハーフパンツ姿で走ってきた。
「洋一もこれから部活?」
「見りゃわかんだろ。」
「そうだけどさ~」
二人がギャイギャイ言い合ってる姿を目の当たりにして本当に幼馴染みなんだと思った。
『えっと…あのぉ~』
俺がおずおずと声を掛けると、二人ははっとして俺を見る。
「あっ、悪ぃ。」
「あっ、すみません。」
『いや…』
初めて声聞いた。
「コイツ、この前ソフトの試合に出てた俺の幼馴染み。」
「えっ?御幸くんも洋一と一緒にいたの?」
『えっ!?今、俺の名前…』
思わず声に出してしまった。
「あっ、はい。ごめんね。洋一や川上から話も聞いてたし…天才キャッチャーと噂の御幸…御幸一也くん!だよね?」
『あっ、はい。』
やっべ…俺のこと知ってるなんて嬉しいんだけど。
てか、倉持もノリも変なこと言ってねーよな?
「てか、お前も部活だろ?」
「そうだよー」
「今日は何部だよ?」
「今日はって何よ~バスケに決まってるでしょ!」
「ヒャハ♪ソフトの次は何かなぁ~って思って。」
「もう!」
『ホントに仲いいんだな。』
「あん?別に仲良くなんてねーよ。」
「そうだよ~!」
倉持の必殺タイキックが高野に炸裂する。